解決事例

2つの相続が連続して発生し、相続財産に借地権が含まれる複雑なケースを一挙に解決


2020年04月27日解決事例


2つの相続が連続して発生し、相続財産に借地権が含まれる複雑なケースを一挙に解決。弁護士の的確な戦略により、最短の期間で最良の結果をお客様にもたらしました

相談前

依頼主 60代 男性

1)状況
 お客様は、3人兄弟の長男です。
 ある年の暮れ、まず最初にお父様が、次いで1ヶ月も経たないうちにお母様が亡くなりました。

2)相続財産
 お客様のご実家は、お父様名義の借地上に建てられていました。
 また、お父様、お母様それぞれが預貯金をお持ちでした。

3)遺言書
 お父様は、亡くなる前に遺言書を残しており、その内容は、「長男(お客様)と次男に、それぞれ借地権の半分ずつと預貯金の3割ずつを相続させる。また、(妻である)お母様には預貯金の4割を相続させる」というものでした。
 三男さんは、余り実家に寄りつかなかったため、相続から除外されてしまっていたのでした。

4)遺留分減殺請求と遺産分割
 お母様の葬儀が終わってほとぼりが冷めた頃、お客様と次男さんは、三男さんからお父様の遺言書について遺留分減殺請求(※1)通知を受け取りました。
 また、お母様は遺言書を残していなかったため、お母様の相続については遺産分割を行う必要がありました。
 つまり、お客様がご両親の相続財産を手にするためには、「遺留分減殺請求」と「遺産分割」という性質の異なる2つの問題を同時に解決する必要があったのです。

※1…相続人が最低限の相続財産を受け取るために行う請求。(本件でいうと、三男さんはお父様の相続から除外されていたとしても、お父様の相続財産の1/12を受け取る権利が法律で認められています)

5)当初の解決策
 遺留分減殺請求を受けて、お客様と次男さんは、次の解決策を立てました。

 【当初の解決策】
 ①最初に、遺留分減殺請求を行った三男さんに、遺留分相当の価額を支払い、借地権をすべて手に入れます。
 ②次に、地主さんとの間で借地権の等価交換を行い、従来の半分程度の広さの土地の所有権を手に入れます。
 ③最後に、お客様と次男さんとの間で手に入れた土地を二等分します。そして、お客様は自分の土地を売却して現金に換え、次男さんは自分の土地の上に自宅を建てて住みます。

 しかし、この解決策には次の問題点がありました。

6)問題点
 当初の解決策を実現すると、お客様は、地主との間で等価交換を行う際の仲介手数料、土地を売却するための仲介手数料、土地売却にかかる税金等、様々なコストを負担することになります。
 他方で、この解決策を実現するためには、上記の通り、三男さんの遺留分を計算し、お客様と次男さんの2人から、三男さんに遺留分相当額を支払う(これを「価額弁償」といいます。)ことになります。
 この三男さんの遺留分相当額は、(借地権の評価額を含む)お父様の相続財産全体の12分の1になります。
 そこで、借地権の評価額をどのように決めるかが問題となりますが、判例上、不動産の評価額は実勢価格(=市場価格)とされており、例え価額弁償後に不動産を売却したとしても、売却にかかる仲介手数料等のコストは考慮されません。
 要するに、お客様は実際に借地権を処分できる値段よりも割高な価格計算で三男さんに価額弁償してしまうことになるのです。

7)当事者同士の話し合いの失敗
 そこで、お客様は三男さんに借地権の評価額を引き下げるように交渉しましたが、三男さんに受け入れられませんでした。
 当事者間での話し合いは1年以上難航し、お客様は困り果てて当事務所にご相談頂きました。

相談後

1)初回の相談
 お客様から最初にお話を伺った際、私は本当に等価交換が必要なのか、疑問に思いました。
 そもそもお客様が借地権の等価交換を行おうとしていた理由は、次男さんが実家の敷地の一部に家を建てて住みたいと思っていたからでした。
 お客様自身にとっては、借地権を現金化できればよいだけですから、等価交換を行う必然性はありません。
 まして、等価交換を行うこと自体、お客様にとって得なのか損なのか、不明な状況でした。

2)借地権の査定
 そこで私は、お客様から正式なご依頼を頂いた後、等価交換の損得を検証するために、付き合いのある不動産取引業者にお願いして借地権を査定してもらいました。
 すると、等価交換によって手に入る予定の土地の評価額は、現在の借地権の評価額を下回ることが判明しました。
 お客様にとって、等価交換は損な取引だったのです。

3)方針の転換
 そこで私は、お客様に対し、等価交換を行うのではなく、借地権をそのまま第三者に売却することをお勧めしました。
 実は、私のこの解決策には、一石二鳥の狙いがありました。
 即ち、三男さんの遺留分の計算の際、借地権の売却価格をそのまま借地権の評価額とすれば良いので、借地権の評価額について三男さんと争う必要がなくなるのです。
 争うべき点が少ないほど、問題解決は早くなります。

4)次男の説得
 そのため私は早速、次男さんと直接面談し、家を建てることを断念するように説得しました。
 次男さんは資金力に乏しく、例え土地を手に入れたとしても、家を建てることは難しかったのです。
 しかし残念ながら次男さんは現実を理解せず、自分の夢に拘ったため、話は物別れに終わりました。

5)調停の申立
 そこで私は、(お母さんの相続について)裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
 調停を申し立てたのは、無理に次男さんを直接説得しようとするよりも、中立の立場である調停委員を通して説得した方が、次男さんに受け入れられやすいと思ったからです。
 調停を最短期間で終わらせるための工夫として、私はかなり詳しい内容の調停申立書を裁判所に提出しました。調停委員に的確に状況を理解してもらい、次男さんを早期に説得してもらおうと考えたからです。

6)調停の進行
 調停が始まると、調停委員はすぐに状況を理解し、次男さんを説得してくれました。
 次男さんは、最初の期日で調停委員の説得に応じ、家を建てることをあきらめて借地権を売却することに同意しました。

7)借地権の売却
 大枠の方針が決まったので、私は、不動産業者に借地権の売却先を探してもらいました。
 幸い、比較的早く売却候補先が見つかり、候補先から買付証明書の提出を受けた上で、地主との間で、借地権の売却を承諾するよう交渉を行いました。 
 ところが地主は、売却候補先よりもはるかに高い金額で借地権を買い取ることを申し出てきました。
 もちろん、高値で売却できるのであれば、お客様も他の相続人も異存はありません。あっという間に地主との話がまとまりました。

8)調停の成立
 地主への売却決定を受けて、遺産分割調停が成立しました。
 もちろん、お父様の相続に関する遺留分減殺請求についても、併せて相続人間で合意し、問題を一挙に解決しました。
 そして調停成立直後に地主との借地権売買契約も成立し、一件落着となりました。

加藤 尚憲弁護士からのコメント

「終わりよければすべて良し」という言葉通り、このケースでは、借地権を高値で売却することに成功したため、お客様にとって大変満足のいく結果となりました。
 今振り返ってみると、この結果を導くためには、2つの大きなターニングポイントがありました。

 1つめは、等価交換をやめて借地権の売却に方針を切り替えたことです。
 お客様の当初の計画通りに事を進めていたら、お客様の手取り金額は1000万円以上下がっていたのは間違いないと思います。
 また、次男さんとの交渉を長引かせず、早期に調停を申し立てる判断をしたことも、功を奏しました。合理的に物事を考えることができない人といつまでも交渉していることは時間を無駄にするので、早く調停を始めた方が、解決が早まることが多いのです。

 2つめは、借地権の売却について、最初から地主と交渉せず、先に第三者と交渉したことです。
 もともと、地主とは等価交換の話が進んでいたので、私たちは地主が借地権の買取を希望しているとは思っておらず、第三者の売却先を探していました。
 ところが、地主からは予想外の高値で借地権を買い取りたいという申し出を受け、最終的に地主を売却先にすることになりました。
 地主が高値を付けた理由は未だに不明ですが、私たちが第三者を売却先の候補として探してきたことから、第三者に負けない値を付けようとしたことは間違いありません。
 第三者の売却先を探したことは、決して無駄な努力ではなかったのです。

 このように、本件は、弁護士がどのような方針を立てるかによって、結果や、解決までに必要な期間が大きく変わる可能性があったケースでした。
 そのような状況で、お客様にとってベストの結果を短期間に出すことができたことが、私にとって大きな自信になりました。
 本件での私の果たした役割は、単に裁判所における調停での交渉に留まらず、地主との交渉でも牽引役を果たすなど、非常に大きなものでした。
 また、お客様には、不動産業者を始め、借地を更地で引き渡すための家屋解体業者、家屋内を片付けるための整理業者、家屋滅失登記を行うための土地家屋調査士など、お客様の目的を果たすために必要な、あらゆる業者をご紹介申し上げました。
 このように、私の人脈を活用してお客様にトータルサービスを提供することができた点も良かったと思っています。

 欲を言えば、もしお客様に初期の段階でご相談頂いていたら、解決が1年以上早くなったことは間違いないと思いますが、私の力を最大限発揮して、お客様のお役に立てたことは大変喜ばしく思っています。


弁護士からのメッセージ

相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
そして、ご相談・ご依頼の後、多くのお客様の表情は、見違えるほど明るくなります。
まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。

弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

弁護士に依頼するメリット

  • 弁護士が代わって交渉するため、相手と直接話し合う必要がなく、ストレスが軽減します
  • 弁護士の専門的知識を背景にした判断により、損失を避け、最短距離の解決を目指します
  • 税理士・司法書士との連携により、相続税の申告や相続登記までワンストップで進めることができます
 

東京西法律事務所の特長

  • 豊富な経験に基づく質の高いアドバイスを提供します
  • 十分な時間をかけた丁寧なサービスを提供します
  • 良好なご相談環境を提供します
 

 

相続に関するご相談はこちら

03-5335-9742受付時間:平日午前9時~午後6時

03-5335-9742受付時間:平日午前9時~午後6時

東京西法律事務所