Q1. 相続で争いのおきやすい場合

Q1. 相続で争いのおきやすい場合

Q1. 相続で争いのおきやすい場合

Q.

相続で争いのおきやすい場合はどのような場合でしょうか。

A.

一般的に争いのおきやすい場合は次のような場合です。複数あてはまる方は特に要注意です。

①ご家族関係について

(1)複数の子供のうちの1人と同居している場合
(2)子供がいない場合
(3)被相続人が複数回結婚している場合
(4)相続人の配偶者が相続に強い関心を持つ場合

②相続財産について

(5)都市部に不動産をお持ちの場合
(6)未上場の会社の株式をお持ちの場合

③その他

(7)以前の相続で、兄弟間で遺産分割がまとまらず、苦労した場合
(8)相続人の希望に食い違いがある場合

(1)複数の子供のうちの1人と同居している場合(危険度:中)

同居している子供と同居していない子供とで、立場に違いが生まれます。次のイラストをご覧ください。

(1)複数の子供のうちの1人と同居している場合(危険度:中)

(2)子供がいない場合(危険度:中)

①嫁と姑の相続(危険度:中)

配偶者がいて子供がいない方が亡くなった場合、配偶者と直系尊属(父母、祖父母など)が法定相続人となります(【直系尊属が法定相続人となるとき】)。いわゆる嫁と姑の間の遺産分割は、それまでの感情的なわだかまりが噴出しやすい状況にあります。

②夫の兄弟と妻の相続(危険度:中)

また、子供がいないうえ、直系尊属も既に死亡している場合、配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹のうち、亡くなった方がいる場合はその子)が法定相続人となります(【兄弟姉妹・甥姪が法定相続人となるとき】)。
ところで、兄弟間の付き合いの濃淡は人それぞれであり、必ずしも普段から交流があるとは限りません。ましてや配偶者の兄弟であれば、更に付き合いは薄くなります。親族同士でも他人に近い生活をしてきた場合、いざ相続が開始した際に遺産分割協議を行おうとしても、心情的に難しい場合があります。
兄弟姉妹や甥姪には遺留分はありませんので、この場合は、遺言書で配偶者にすべての相続財産を相続させることができます。

(3)被相続人が複数回結婚している場合(危険度:高)

被相続人に、いわゆる先妻と後妻がいる場合、先妻、後妻それぞれが産んだ子供と、後妻本人が相続人となります。感情的な溝のある2つの家族の間で遺産分割を行う場合、一般的に、争いになる危険性は高く、対策が必須と考えられます。

(4)相続人の配偶者が相続に強い関心を持つ場合(危険度:中~高)

被相続人の複数の子が相続人となる場合、血を分けた兄弟が相続人同士であるため、通常は互いにある程度の遠慮があります。そして、一般的にはそのような兄弟間の人間関係が相続を巡る争いが発生することを抑制しています。
しかし、相続人の配偶者は元々他人であるため、余り遠慮がなく、人によっては相続人をけしかけるようにして様々な主張をさせることがあります。
そのような場合、相続人と配偶者との家庭内での力関係や経済事情などにより、相続をめぐる争いが顕在化する危険性が高いため、対策が必要と考えられます。

(5)都市部に不動産をお持ちの場合(危険度:中)

東京都を始めとして、都市部では不動産は財産として大きな価値を持っています。そのため、不動産が相続財産の価額の大部分を占めていることが少なくありません。
相続財産の中に不動産が複数あったり、広大な土地であったりすれば、比較的分割はしやすくなりますが、そのような条件が整っているとは限りません。
特に、自宅不動産以外に見るべき相続財産がない場合、相続人間の公平を保つことが難しく、遺産分割協議がまとまりにくい原因となるため、対策が必要となります。

(6)未上場の会社の株式をお持ちの場合(危険度:中)

未上場の会社の株式の価値は、必ずしも決まった算定方法があるわけではなく、実務上いくつかの方式を併用しています。
会社を承継する方とその他の相続人の方とで、立場の違いから、株式の価値について意見の相違が発生する場合があります。
また、未上場の会社の株式が、相続財産の価額の大部分を占めている場合、結果として会社を承継する方が相続財産の大半を相続することとなることについて、他の相続人の方が容易に納得しないことがあります。
事業承継に関しては、遺言書の作成や生前の株式の譲渡を含めた総合的な対策が必要となります。

(7)以前の相続で、兄弟間で遺産分割がまとまらず、苦労した場合(危険度:高)

父の相続でもめた場合は、母の相続でも同じ事が繰り返されることが予見されます。
相続の結果に不満を持っている相続人がいる場合は、以前の相続の中で一度解決したはずの話について、話を蒸し返すことがあります。

(8)相続人の希望に食い違いがあることが明らかな場合(危険度:高)

相続人の間で相続について異なる希望を抱いていることがはっきりしている場合、争いになる可能性が高いです。
例えば、相続人のうち1人が、被相続人と同居している場合があります。
同居している相続人は、相続発生後も自宅を相続して引き続き住み続けることを希望することが多いと考えられます。
他方で、他の相続人は、相続が発生した際には、被相続人の自宅を売却して代金を分割したいと考えることがあります。
このように、相続人同士で相続について異なる希望を持っていると考えられるときは、対策が必要です。

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弁護士  加藤 尚憲

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