9-3-1 寄与分

9-3-1 寄与分

Q.

私は、長年に渡り父と母と同居し、両親が認知症になった後は、ずっと介護をしてきました。私の苦労は相続で報いられるのでしょうか。

A.

相続分を決めるにあたり、寄与分として考慮される可能性があります。

(1)寄与分とは

①共同相続人のうち特定の相続人が
②相続財産の維持・増加について
③特別の寄与をした場合に
寄与に相当するものとして共同相続人の間の協議によって定める価額を「寄与分」といいます(民法904条の2)。
また、特別の寄与をした相続人を、「寄与分権利者」といいます。

(2)寄与分のある場合の相続分

共同相続人の一人に寄与分のある場合、その相続人が寄与分に相当する相続財産をいわば先取りし、残りの相続財産を法定相続人全員で法定相続分に従って分配するのと同じになるように、具体的相続分を定めます(つまり、寄与分権利者の具体的相続分は法定相続分より多くなります)。

(3)寄与分の制度が存在する理由

複数の法定相続人がいる場合に、その中で、相続財産について特別の貢献をした人がいるときがあります。例えば、被相続人に長年生活費を渡してきた相続人がいる場合、今の相続財産の額があるのは、その相続人のおかげであるといえます。寄与分は、そのような貢献を認め、これを相続に反映させるための制度です。
寄与分の制度は、それまでの判例理論を明文化したものであり、昭和55年に新設されました。

(4)寄与分を定める方法

次の2つの方法があります。

①共同相続人が協議により定める方法
②(①の協議が整わない場合)家庭裁判所が、寄与分権利者の請求により定める方法

②の場合については、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮するものとされています。

(5)寄与分がある場合の相続分の計算

寄与分が認められる場合、それぞれの法定相続人の具体的な相続分は、次の通りに計算します。

STEP① 寄与分の控除(みなし相続財産の算定)
相続財産から寄与分の額を控除したものを相続財産とみなします(控除後の財産を「みなし相続財産」といいます。)。 

STEP② 一応の相続分の算定
みなし相続財産を法定相続分に従って分配します。
この分配によって各相続人が取得する相続分を「一応の相続分」といいます。

STEP③ 具体的相続分の算定
寄与分の認められる法定相続人(これを「寄与分権利者」といいます。)の法定相続分に寄与分を足し、具体的な相続分を計算します(これを「具体的相続分」といいます)。
それ以外の法定相続人の具体的相続分は、②で計算したままの金額分となります。

<計算式>
上記①~③の計算を式で表すと、以下の通りになります。

寄与分権利者の具体的相続分=(相続財産の価格-寄与分の価格)×法定相続分+寄与分の価格
寄与分権利者以外の相続人の具体的相続分=(相続財産の価格-寄与分の価格)×法定相続分

(6)具体例

①家族の紹介
良太郎さんには、長男の太郎さん、二男の次郎さんがいました。
太郎さんと妻の花子さんは、良太郎さんと40年間同居し、高太郎さんの退職後は太郎さんが良太郎さんの生活費を支出してきました。
また、花子さんは、良太郎さんが寝たきりになった後、ずっと高太郎さんの介護をしてきました。

②高太郎さんの遺産分割
ある日、良太郎さんが高齢により亡くなりました。
高太郎さんの相続財産は、自宅(4000万円相当)と預貯金8000万円でした。
これから良太郎さんの遺産分割協議を行います。
太郎さんと次郎さんは、遺産分割協議の中で、太郎さんの寄与分を2000万円相当とすることに合意しました。

(結論)

①法定相続人
良太郎さんの法定相続人・ ・ ・ ・太郎さん、次郎さんの2人

②法定相続分
太郎さんの法定相続分・ ・ ・ ・1/2
次郎さんの法定相続分・ ・ ・ ・1/2

③具体的相続分
太郎さんの法定相続分・ ・ ・ ・7000万円
次郎さんの法定相続分・ ・ ・ ・5000万円

(解説)

上記(5)のSTEP①~③に従って太郎さんと次郎さんの相続分の計算を行います。

STEP① みなし相続財産の算定
まず相続財産(1億2000万円)から寄与分(2000万円)の額を控除した1億円が相続財産の額とみなされます。

STEP② 一応の相続分の算定
次に、これを法定相続分に従って等分すると、太郎さん、次郎さんともに一応の相続分は5000万円となります 。

STEP③ 具体的相続分の算定
更に、太郎さんには寄与分の2000万円があるので、これを相続分に足し、太郎さんの具体的相続分は7000万円となります。

以上から、太郎さんの具体的相続分は7000万円、次郎さんの具体的相続分は5000万円となります。

(具体的解決)

太郎さんと次郎さんは、太郎さんが自宅(4000万円)と預貯金のうち3000万円を相続し、次郎さんが預貯金のうち残りの5000万円を相続する旨の遺産分割協議書を作成しました。
もし寄与分制度がなければ、法定相続分に従い、太郎さん、次郎さんそれぞれ6000万円分の相続分を有することになりました。そうなれば、これまでの太郎さん、花子さんの苦労は相続では報いられなくなってしまったでしょう。

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