被相続人は、遺言で、相続財産の分割方法を定めることができます(民法908条)。これを「遺産分割方法の指定」といいます。
遺言者が相続財産のすべてについて遺産分割方法の指定を行う場合は、相続財産は、すべて遺言の指定により分割されるため、相続人は遺産分割の合意を行う必要がありません。
従って、遺言書が存在する場合は、一般的には遺産分割の合意は行われません。
もっとも、遺言書があっても、(何らかの事情により)相続人がこれと異なる内容の遺産分割の合意を行うことは可能です。相続人が遺言の内容と異なる遺産分割の合意を行った場合、遺産分割の合意が優先します。
遺産分割方法の指定は、遺言により、特定の財産を特定の相続人に直接帰属させます(相続開始後の遺産分割協議は不要)。
例)「東京都千代田区一丁目1番1号の土地を長男に相続させる。預貯金はすべて次男に相続させる。」
相続分の指定は、相続分の割合のみ定め、具体的な相続財産の分け方は相続人の協議に委ねます(相続開始後の遺産分割協議が必要)。
例)「長男と次男にそれぞれ相続財産の2分の1を相続させる。」
相続分の指定の場合、相続財産に不動産や預貯金など複数の財産が含まれる場合、遺言書で抽象的に「2分の1」といっても、具体的にどの財産をどの相続人が相続するかは、遺産分割協議を行わないと決まりません。
遺言書では、良く特定の相続財産を誰々に「相続させる」などという表現を使います。
この「相続させる」という言葉が、遺贈なのか遺産分割方法の指定なのかについて、かつては見解が分かれていました。
なぜこのような解釈が問題になるかというと、遺贈と遺産分割方法の指定とでは、登録免許税(不動産登記にかかる登記手数料)の額が異なっていたからです。
現在は、平成3年の最高裁の判例に従い、原則として遺産分割方法の指定であると考えられています。
被相続人は、分割方法の指定を第三者に委託することもできます。
例)「遺言執行者に対し、相続財産のすべてにつき、その分割方法の指定を行うことを委託する。」
遺産分割方法の指定として、特定の財産を処分し、これを相続人間で分配するという方法があります。
例)「遺言執行者において本件不動産を売却し、代金から売却費用を控除した残額を長男太郎と二男次郎に半分ずつ相続させる。」
弁護士からのメッセージ
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弁護士 加藤 尚憲