10-4-4 遺留分侵害額請求

10-4-4 遺留分侵害額請求

(1)遺留分の侵害

遺言により指定された相続分が遺留分を下回る場合、「遺言が遺留分を侵害する」といいます。

(2)遺留分侵害額請求

遺言が遺留分を侵害している場合、遺留分を侵害された法定相続人は、遺留分に相当する金額の支払を求めることができます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

(3)遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求は、相手方に意思表示をするだけで良く、訴訟を提起する必要はありません。遺留分侵害額請求権を行使する場合は、通常は内容証明郵便で通知します。なぜなら、次に述べるとおり、遺留分侵害額請求権には行使期限があるため、期限内に遺留分侵害額請求権を行使したことの証拠を残しておく必要があるからです。

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【遺留分侵害額請求権通知の記載例】

遺留分侵害額請求権通知の記載例

(4)期間の制限

遺留分侵害額請求権の行使には、期間の制限があります。遺留分侵害額請求権は、遺留分の侵害を知った時から1年以内(かつ相続開始から10年以内)に行使する必要があります。

(5)遺留分侵害額請求の効果

遺留分侵害額請求を受けた受遺者や受贈者は、遺留分侵害額請求を行った相続人に対し、法律の定める順序に従い、遺贈や贈与を受けた目的物の価額を限度として、遺留分侵害額を支払う義務を負います。

【相続法改正アップデート】 相続法改正前は、遺留分侵害額請求は、「遺留分減殺請求」という制度でした。
この「遺留分減殺請求」は、以下のようなものでした。

遺留分減殺請求が行われた場合、遺言は、遺留分減殺請求をした相続人の遺留分を侵害する限度で効力を失い、受贈者又は受遺者が取得した権利は、その限度で遺留分権利者に帰属しました(最高裁昭和51年8月30日判決)。

そして、遺留分減殺請求権の行使を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分を侵害する範囲で、遺贈又は贈与を受けた財産を返還する義務を負いました(民法1036条)。
つまり、遺留分減殺請求は、請求をした人と請求を受けた人の間で、相続財産の共有をもたらす可能性のある制度だったのです。

もっとも、多くの場合は、相続財産の共有に代えて、金銭的解決(価額賠償といいます)が図られてきました。
仲の良くない相続人同士が財産を共有することは現実的ではないと考えられたからです。
そこで、民法改正の際、実情に合わせ、相続財産の共有に代えて、金銭の支払いを求める権利が生まれました。

(6)具体例

【遺留分権利者と遺留分の割合の(5)の具体例】で、次郎さんの遺留分は3000万円でした。
従って、次郎さんは、太郎さんに対し、遺留分侵害額請求権を行使し、3000万円の支払いを求めることができます。

(7)遺留分侵害額請求後の交渉

遺留分侵害額請求を行った後、相続人の間で交渉が行われることが通常です。
なぜなら、相続財産に不動産が含まれることが多く、その評価によって、遺留分侵害額の具体的な金額が異なるからです。
また、遺留分算定の基礎となる特別受益の有無が争点となる場合もあります。

(8)専門家の利用

一般的に、遺留分侵害額請求は、弁護士を代理人として行うことが良くあります。その理由は以下の通りです。
①確実に法的に有効な遺留分侵害額請求を行う必要がある。
②遺留分侵害額請求を行う場合、遺留分侵害額請求を行う相続人の立場からは相続財産の全体が分からないことが多く、相続財産の調査に専門家の助言が必要になることが多い。
③不動産や有価証券などの相続財産については価額の評価が必要なため、専門的知見が必要になる場面が多い。
④遺留分侵害額請求の後に相続人間で交渉が必要となるため、専門家が間に入った方が冷静な話し合いがしやすい。

弁護士からのメッセージ

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これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。

弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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