限定承認は、相続財産が債務超過であるか否かが明らかでない場合に選択することを制度の前提としています。
しかしながら、そのような場合、裁判所に熟慮期間を伸長してもらい、時間をかけて慎重に相続財産の調査を行った上で、単純承認又は放棄を選択することも可能なはずです。
しかし、限定承認には他の制度にない利点があり、場面に応じて放棄や単純承認と使い分けることができます。
以下、①限定承認と相続放棄の比較、②限定承認と単純承認の比較について説明します。
(a)限定承認が優れている点
①相続が可能である点
どれだけ慎重に相続財産の調査を行ったとしても、積極財産の価額と消極財産の価額のどちらが大きいか判明しないこともあります。そのような場合には、限定承認を行うことにより、過大な債務を負う危険性を回避しながら相続することが可能になります。
②先買権が行使できる点
相続財産の中に、相続人が現在居住している不動産など、どうしても手元に残したい財産が含まれている場合があります。限定承認の場合、相続人は、先買権を行使することにより、特定の相続財産を対価を支払って買い受けることができます。
③被相続人の直系尊属や兄弟姉妹を巻き込まない点
法定相続人全員が相続放棄を行うと、次の順位の血族が繰り上がって法定相続人となります。
従って、債務超過を理由として相続放棄を行う場合は、あらかじめ法定相続人となる可能性のある人全員に知らせた上で行わないと、親族間のトラブルを招きかねないことになります。
トラブルを避けるためには、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹にも相続放棄を行なってもらう必要がありますが、限定承認はこのようなことがありません。
(b)相続放棄が優れている点
手続が容易である点
相続放棄は、裁判所への申述を行えば足り、その後の手続はありません。従って、限定承認が優れている点を活かしたい状況でなければ、相続放棄の方が簡便です。
(a)限定承認が優れている点
①危険性を回避できる点
どれだけ慎重に相続財産の調査を行ったとしても、積極財産の価額と消極財産の価額のどちらが大きいか判明しないこともあります。そのような場合には、限定承認を行うことにより、過大な債務を負う危険性を回避しながら、相続することが可能になります。
(b)単純承認が優れている点
①手続が容易である点
単純承認を行う場合は、特に何もする必要がありません。従って、限定承認が優れている点を活かしたい状況でなければ、単純承認の方が簡便です。
②譲渡所得税が課税されない点
限定承認により資産の移転があった場合、時価で資産の譲渡があったものとして、所得税が課税されます(所得税法59条)が、単純承認の場合は、このような課税はなされません。
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弁護士 加藤 尚憲