9-2-9 借入金と保証債務

9-2-9 借入金と保証債務

Q.

先月亡くなった父は、銀行から借金をしていました。私たち相続人はどのような割合で父の借金を引き継ぐのでしょうか。

A.

被相続人の債務は、相続の発生により、相続人全員がその法定相続分に応じて当然に承継します。
債務の相続の詳細については、以下の説明をご覧ください。

(1)積極財産と消極財産

相続財産には、(不動産、預貯金といった)プラスの財産と、(借金のような)マイナスの財産があります。一般に、プラスの財産を「積極財産」、マイナスの財産を「消極財産」と呼びます。
相続人は、これらの積極財産と消極財産をあわせた相続財産全体を相続します(積極財産だけを相続するということはできません)。

(2)金銭債務の相続

相続人は、不動産のような積極財産については、その合意により、誰がどの財産を相続するのか自由に決めることができます。
これに対し、被相続人の金銭債務は、相続開始と同時に共同相続人にその相続分に応じて当然に分割承継されることとされています(最高裁昭和34年6月19日判決)。
つまり、消極財産については、相続人が自由に決めることはできません。なぜなら、例えば1人の相続人がすべての借金を背負い、別の相続人がすべての積極財産を相続するということができてしまうと、債権者が損害を被るからです。

(3)具体例

① 家族の紹介
良太郎さんと和子さん夫婦には、
長男の太郎さんと
二男の次郎さんがいます。

② 良太郎さんの相続
高齢により、ある日良太郎さんが亡くなりました。
良太郎さんは、不動産投資を行うため、銀行から個人で1億円の借入を行なっていました。

結論

和子さん、太郎さん、次郎さんは、それぞれ、法定相続分に従い、銀行に対して、和子さんは5,000万円、太郎さんは2,500万円、次郎さんは2,500万円の債務を負います。

(4)金銭債務がある場合の手順

すでにご説明したとおり、相続人の間だけで誰が借入債務を負うかについて決めることはできません。他方で、相続人の間では、相続人それぞれが、各自が相続する積極財産の割合に応じて借入債務も相続することとしたい場合があります。
そこで、金融機関からの借入がある場合には、以下の手順を踏みます。

STEP① 相続人間で誰が債務を引き受けるのかについて話し合います。
STEP② ①の話し合いの内容に沿って金融機関と打ち合わせ、了解を得ます。
STEP③ 相続人間で遺産分割協議書を作成します。
STEP④ 銀行との間で免責的債務引受契約の締結を行い、特定の相続人が債務を引き継ぎ、他の相続人は債務から解放されます。

※免責的債務引受とは、第三者が債務者の債務を引受け、その代わりにもとの債務者が債務から解放される内容の契約です。免責的債務引受を行うためには、債権者(銀行)、債務者(債務から解放される相続人)、引受人(債務を負う相続人)全員の合意が必要です。

(5)借入金と保証債務の調査

被相続人の借入金と保証債務の調査については、【借入金と保証債務の調査】をご覧下さい。

(6)住宅ローン

住宅を購入する際、金融機関から住宅ローンを借りるときがあります。住宅ローンを借りる際は、通常、債務者が団体信用生命保険に加入します。そして、団体信用生命保険は、その加入者が死亡した場合、債権者(住宅ローンの貸付を行った金融機関)に保険金が支払われ、住宅ローンに充当される仕組みとなっています。従って、一般的に、相続発生時に自宅を購入した際の住宅ローンが残っていたとしても、心配する必要はありません。

(7)保証債務

連帯保証人が死亡した場合、相続人は、連帯保証債務を相続します。そして、相続人が複数の場合、それぞれの相続人は、当然に相続分に応じて分割された連帯保証債務を承継します(横浜地裁昭和59年10月26日判決)。会社の代表者が会社の借金について連帯保証人となっていた場合も、同様の結論となります。
ただし、銀行との間で、次の代表者がすべての連帯保証債務を負う代わりに、他の相続人は債務の免除を受ける内容の免責的債務引受契約を締結することが一般的です。

(8)相続放棄

債務を含め、一切の相続財産を相続しない方法についての説明は、【承認・放棄・限定承認の選択】をご覧下さい。

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弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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