相続人の間に遺言書の効力に争いがあり、解決できない場合は、最終的には遺言書の効力を否定する立場の相続人が遺言無効確認訴訟を提起し、訴訟による決着を図ります(まれに、遺言の効力を肯定する立場の相続人から遺言有効確認訴訟を提起することもあります)。
遺言書の効力のうち、①遺言書の真正、②遺言書の適式性、③遺言能力 のいずれが争点である場合も、結局のところ法的に有効な遺言書が存在するか否かという点に帰着するため、すべて遺言無効確認訴訟の中で争われます。1つの遺言無効確認訴訟の中で複数の点について争われることもあります。
遺言無効確認訴訟においては、当事者の主張と提出する証拠にもとづき、裁判所が遺言の有効性について判断します。
遺言書の真正について、裁判所は、筆跡鑑定の結果を絶対視しない姿勢を取っています。 裁判所は、遺言書の内容と遺言者を取り巻く状況との整合性や、遺言書の作成当時の遺言者の文字を筆記する能力など、様々な事実を総合的に考慮して判断を行います(東京高裁12年10月26日判決)。
遺言能力が争いになった場合について、裁判所は、これまで必ずしも遺言書を有効ないし無効とする明確な線引きを示しているわけではありません。
ただし、裁判所は概ね以下の3点の事実を中心とした様々な事情を総合的に考慮して遺言能力の有無を判断しているものと考えられます。
①遺言書作成当時の遺言者の認知症の程度
裁判所は、認知症が高度なほど、遺言能力を否定する方向に傾きます。認知症の程度の測り方については、【 遺言能力 】をご覧ください。
②遺言内容の複雑さ
裁判所は、遺言者の認知症の程度から見て、通常理解できるような内容であるか、あるいはそれを超えた複雑なものであるかを考慮します。
③遺言内容が従前からの遺言者の意思と一致しているか
裁判所は、遺言書の内容が、遺言者の以前からの言動と矛盾していないか、また、遺言者が以前にも遺言書を作成したことがある場合には、従前とどの程度異なる内容となっているかなどを考慮します。
遺言無効確認訴訟は、訴訟手続であることから、一般的に、相続人が代理人をつけずに提起することは困難であると考えられます。 従って、遺言確認訴訟を提起するときは、弁護士を代理人とすることをお勧めします。
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
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これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
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弁護士 加藤 尚憲