7-1-5 熟慮期間の伸長

7-1-5 熟慮期間の伸長

(1)熟慮期間の伸長

相続財産が散在している、被相続人の債務の額が不明であるなどの理由により、相続財産の調査に時間がかかり、3ヶ月の熟慮期間内に相続の承認・放棄の選択が困難な場合があります。その場合、裁判所に熟慮期間の伸長を申立てることができます(民法915条1項)。

(2)熟慮期間の伸長の申立手続

熟慮期間の伸長の申立を行うためには、裁判所に申立書と添付書類(戸籍謄本など)を提出します。

①申立書
【申立書の書式】(裁判所ホームページより)
【裁判所ホームページ上の説明】

②戸籍謄本
(a)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本ないし除籍謄本
被相続人の死亡の事実を確認するためです(【被相続人の死亡を証明するとき】
(b)申立人が被相続人の法定相続人であることがわかるために必要な戸籍謄本
申立人が法定相続人であることを確認するためです(【被相続人との関係を証明するとき】

③住民票
(a)被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
被相続人の住所を特定するためです(【住民票と戸籍の附票】
裁判所が申立を相当と認めた場合のみ、熟慮期間は伸長されます。

(3)伸長の審判の申立のタイミング

熟慮期間の伸長の審判の申立を行うためには、申立書の添付書類である戸籍謄本等を取得するなど、一定の準備期間が必要です。また、伸長の可否は裁判所の判断に委ねられており、熟慮期間内に伸長の審判がなされない場合は法定単純承認の効果が生じてしまいます。従って、相続財産の調査に時間がかかりそうな場合は、調査の比較的初期段階で調査と並行して伸長の申立の準備を始めることをお勧めします。

(4)伸長期間

伸長される期間は、事情に応じ、裁判所が決定します(原則3ヶ月、事情に応じ半年程度)。
場合により複数回伸長を受けることも可能です。

(5)熟慮期間の伸長の申立件数

熟慮期間の伸長の申立は、年間7千件程度あり、うち9割が認められているようです(司法統計年報平成23年度)。

(6)専門家の利用

熟慮期間の伸長の申立は、弁護士が代理人となって行うことができます。

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弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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