ある人が被相続人の法定相続人であることを戸籍謄本により証明する必要がある場合があります。典型的には、①「相続させる」旨の遺言により不動産を相続した相続人が所有権移転登記を行う場合や、②相続人が裁判所に相続放棄の申立を行う場合などです。
ある人が被相続人の法定相続人であることを証明するために必要な戸籍謄本は、その人が被相続人から見て①直系卑属、②直系尊属、③兄弟姉妹・甥姪のいずれであるかによって異なります。
なぜなら、血族相続人には優先順位があるため(【法定相続人】)、被相続人から見て直系尊属や兄弟姉妹・甥姪にあたる人が法定相続人であるといえるためには、より高い優先順位の法定相続人がいないことを示す必要があるからです。
従って、相続人が被相続人から見て①直系卑属の場合、②直系尊属の場合、③兄弟姉妹・甥姪の場合に分けて、必要な戸籍謄本について説明します。
相続人が直系卑属の場合、以下の戸籍謄本により相続人と被相続人の関係を明らかにすることが必要となります。
①被相続人の死亡当時の戸籍謄本(戸籍が除籍されている場合は除籍謄本)
②相続人の現在の戸籍謄本
被相続人と相続人が同じ戸籍に入っている場合は、①②は同じものとなります。
もっとも、上記①②のみでは相続人と被相続人との関係が明らかでない場合もあります。
例えば、被相続人と同じ戸籍に入っていた相続人が結婚により別の戸籍となり、その後他の市区町村に転籍したとします。そのような場合、相続人の現在の戸籍を見ただけでは、被相続人と同じ戸籍に入っていた人と同一人物であるか、あるいは同姓同名の人であるかは分かりません。
そのような場合は、被相続人と相続人の関係がわかる程度に過去に遡って戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を確認することが必要となります。
相続人が直系尊属の場合、
①被相続人の死亡当時の戸籍謄本又は除籍謄本(戸籍が除籍されている場合は除籍謄本)
②相続人の現在の戸籍謄本
が必要となることは、既にご説明した被相続人が直系卑属の場合と同様ですが、これに加え、
③被相続人の「出生から死亡までのすべての戸籍」
も必要となります。
なぜなら、直系尊属が相続人となるためには、被相続人に直系卑属が1人もいないことが前提となっており(【法定相続人】)、このことを戸籍謄本により確認する必要があるからです。
なお、出生から死亡までのすべての戸籍謄本は、死亡時の戸籍謄本を常に含んでいるので、上記③の戸籍を集めれば必ず上記①を満たすことになります。
相続人が兄弟姉妹・甥姪の場合、相続人が直系尊属の場合と同様に、
①被相続人の死亡当時の戸籍謄本又は除籍謄本
②相続人の現在の戸籍謄本
③被相続人の「出生から死亡までのすべての戸籍」
が必要となりますが、更に、
④すべての直系尊属の死亡当時の戸籍謄本(戸籍が除籍されている場合は除籍謄本)
が必要となります。
なぜなら、兄弟姉妹・甥姪が相続人となるためには、(被相続人に直系卑属が1人もいない上に)直系尊属がすべて亡くなっていることが前提となっており(【法定相続人】) 、このことを戸籍謄本により確認する必要があるからです。
なお、出生から死亡までのすべての戸籍謄本は、死亡時の戸籍謄本を常に含んでいるので、上記③の戸籍を集めれば必ず上記①を満たすことになります。
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弁護士 加藤 尚憲