寄与分は、①法定相続人が、②被相続人の財産の維持又は増加について、③特別の寄与をした場合に認められます。上記①から③について、それぞれ裁判上の実例を挙げて説明します。
認められないものの例:
(a)内縁の妻
(b)子の配偶者(例えば、息子の嫁)(但し、息子の相続分について、寄与分として算入される可能性があります(横浜家裁平成6年7月27日審判))。
認められるものの例 | 認められないものの例 |
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長年にわたる療養看護の結果、他人を付添婦として雇った場合支払うべき費用を免れた場合(盛岡家裁昭和61年4月11日審判) | 被相続人に対する世話をしたが日常家事程度にとどまり、それ以上の特別の介護費用を要する種類のものではなかった場合(長崎家裁諫早出張所昭和62年9月1日審判) |
認められるものの例 | 認められないものの例 |
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相続人が被相続人の事業を長年にわたって助け、被相続人の財産の増加をもたらしたが、相続人は小遣い程度の金額しかもらっていなかった場合(大阪高裁平成2年9月19日決定) | 相続人が被相続人の事業を助けていたが、貢献に見合う額の給与をもらっていた場合(京都家裁平成2年5月1日審判) |
これまで裁判上寄与分が認められてきた例を類型化すると、おおよそ次のようになります。
①労務提供
被相続人の営む事業に対して無報酬あるいはそれに近い形で従事し、労務を提供して、相続財産の維持又は増加に寄与する場合
②事業上の利益の提供
被相続人やその事業に対して、財産上の給付あるいは財産的な利益を提供して財産を維持・増加させ、あるいは、債務の返済等により被相続人の財産の維持に寄与する場合
③療養看護
被相続人の療養看護を行い、医療費や看護費用の支出を避けることによって相続財産の維持に寄与する場合
④扶養
特定の相続人のみが被相続人を扶養し、被相続人の支出を減少させその財産の維持に寄与する場合
⑤財産管理
被相続人の財産管理をし、被相続人が管理費用の支出を免れるなどにより被相続人の財産の維持に寄与する場合
一般的に、療養看護に基づく寄与分が認められるためには、以下の要件を満たす必要があると考えられています。
①療養看護の必要性が高いこと(必要性)
※一般的に、要介護度1の状態であれば特別な寄与に当たるほどの介護が必要とは考えがたく、要介護度2以上の状態にあることが目安となるとされています。
②継続的に療養看護をしたこと(継続性)
※少なくとも数カ月程度、看護を継続する必要があると考えられています。
③専従的に療養看護をしたこと(専従性)
※フルタイムの仕事を持ちながら介護を行った場合などは、寄与分が認められない場合があります。
④被相続人との身分関係に照らし通常期待される程度を超えて療養看護をしたこと(特別の寄与)
療養看護による寄与分が認められる場合の寄与分額の計算方法について、実務上の一般的基準は以下の計算式によるものとされています。
寄与分額=付添婦の日当額×療養看護日数×裁量的割合
日当額は要介護度などによって異なります。
また、裁量的割合は「0.7」が標準とされています。
寄与分額の算出にあたり、裁量的割合を掛けるのは、親族がプロと同程度の水準の介護を行うことは難しいこと等が理由とされています。
寄与分に関する裁判例は、同じような事例でも、裁判所の判断が分かれることが多く、必ずしも裁判所の判断基準が確立されているとは言い難い状況にあります。上記の例に照らしても、寄与分にあたるかが不明な場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
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これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
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弁護士 加藤 尚憲