5-2-1 遺言書の真正

4-4-1 相続財産管理人の選任

Q.

先月亡くなった父が遺言書を残していると兄から聞きました。遺言書の内容は兄に有利なようですが、私はこの遺言書に従わなければいけないのでしょうか。

A.

①遺言書が真正か、②遺言書が有効か、③遺留分を侵害していないかの3点を確認することをお勧めします。

まず、この項目では、遺言書の真正についてご説明します。遺言書の有効性については、【 遺言書の有効性 】を、遺留分については、【 遺留分 】をそれぞれご覧下さい。

(1)遺言書の真正とは

遺言書は、遺言者本人の意思に基づいて作成する必要があり、本人の意思に基づかずに作成された遺言書(すなわち偽造や替え玉による遺言書)は法律上有効に成立しません。
本人の意思に基づき作成された遺言書を「真正な」遺言書といいます。

(2)公正証書遺言の場合

公正証書遺言については、その作成時に公証人が身分証などにより遺言者の本人確認を行います。この本人確認により、遺言書の真正が担保されます。
従って、公正証書遺言の場合は、遺言書の真正が問題となることは、あまりありません。

(3)自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言は、遺言者が全文を自書し、署名することにより作成し、必ずしもその作成過程に第三者が関与しません。
そのため、自筆証書遺言については、一般的に、遺言書を作成したのが遺言者本人であるかは客観的に明らかでなく、遺言書の真正は担保されていません。従って、遺言書の真正が問題になることが少なくありません。
また、遺言書の内容について不利な相続人が、無理矢理、遺言書を偽物であると主張する例も見受けられます。

(4)遺言書の真正の確認方法

自筆証書遺言について、本人が作成したか否か不明な場合は、遺言書(原本ないし検認調書の謄本)と本人が手書きで作成した他の書面(年賀状など)との比較を行います。
その上で、遺言書の真正に疑わしい点がある場合や、遺言書の真正が争いとなる場合は、筆跡鑑定を依頼することを検討して下さい。

(5)筆跡鑑定

筆跡鑑定にかかる費用は、鑑定人によって異なりますが、予備的な検討段階で3万円程度、正式な鑑定書の作成が30万円程度です。相当額の費用がかかることから、無駄な鑑定を避けるため、まず本当に鑑定が必要か、必要な場合はどのタイミングで行うかについて、弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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