5-2-3 遺言書の適式性

5-2-3 遺言書の適式性

(1)遺言書の方式

遺言書は、必ず法律の定める形式(方式)に従って作成する必要があり、適式でない遺言書(形式に従わない遺言書)は無効となります。 遺言書の方式には、いくつかの種類があります(【 遺言書の作り方 】)。 ただし、これまで、公正証書遺言、自筆証書遺言以外の形式は、現実に使われることは非常に稀でした。

(2)公正証書遺言

公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言書の適式性が問題になることはほとんどありません。 ただし、公正証書の作成の際に、遺言者が公証人の質問に対して言葉で答えず、単にうなずくなどの動作によって意思表示を行ったにすぎない場合に、遺言の内容の「口授」(民法969条2号)があったものとはいえないとして、遺言書を無効とした裁判例もあります(最高裁昭和51年1月16日判決)。

(3)適式でない公正証書遺言

公正証書遺言は公証人が作成するため、遺言書の適式性が問題になることはほとんどありません。
ただし、公正証書の作成の際に、遺言者が公証人の質問に対して言葉で答えず、単にうなずくなどの動作によって意思表示を行ったにすぎない場合に、遺言の内容の「口授」(民法969条2号)があったものとはいえないとして、遺言書を無効とした裁判例もあります(最高裁昭和51年1月16日判決)。

(4)自筆証書遺言の方式

自筆証書遺言は、以下の方式により作成する必要があります。 ①最初から最後まですべて自筆(手書き)で書かれていること

【相続法改正アップデート】
相続法の改正により、平成31年1月13日以降に作成された遺言書について、遺言書に財産目録を添付する場合、財産目録は手書きである必要がなくなりました。
例えば、不動産を特定するために、登記簿謄本をそのまま添付することができます。
ただし、財産目録はすべての紙ごとに(両面使用の場合は両面共に)署名捺印することが必要です。
財産目録にホチキス止めや契印をしなくても無効ではありませんが、遺言書との一体性が不明な場合、紛争の元となる可能性があります。

②日付が明確に記載されていること
③遺言者が署名していること
④遺言者が捺印していること

(5)適式でない自筆証書遺言

自筆証書遺言は、ほとんどの場合、専門家が関与せずに作成されます。
そのため、知らず知らずのうちに要件を欠いて無効になるものが数多くあります。
自筆証書遺言を発見した場合、まずは要件が整っているか、確認が必要です。

(6)内容が明確でない遺言

法律上の形式を備えていても、遺言書の内容がはっきりしないため、相続人の間でトラブルになることも多くあります。

例えば、相続人のうち、長男に自宅を相続させる内容の遺言書があったとします。
遺言書に他に何も書いていない場合、預貯金はどのように遺産分割すれば良いのでしょうか。

長男は、自宅は遺言書で自分が相続し、更に預貯金は次男と半分ずつ相続すべきだと考えるかもしれません。

これに対し、次男は、あくまで法定相続分は2分の1ずつである以上、預貯金の大半は自分が相続することで、相続財産全体が半分ずつになるように分けるべきだと考えるかもしれません。

あなたはどちらが正解だと思いますか。

実は、この問題には決まった正解はなく、遺言書がどのような趣旨で作成されたかによって結論が変わってきます。

とはいっても、遺言書を作成した人は既に亡くなっている以上、本人にどのようなつもりで遺言書を作成したか尋ねることはできません。

結果として、相続人がそれぞれ自分に有利な解釈をして争う可能性があります。

内容が明確でない遺言書を見付けた場合、専門家に相談することをお勧めします。

(7)法務局による遺言書の保管(【相続法改正アップデート】)

相続法の改正により、令和2年7月10日から法務局が自筆証書遺言を預かる制度が始まりました。
自筆証書遺言は、公正証書遺言に比べ、形式不備により無効となったり、紛失したりする危険があります。
そこで、法務局が形式をチェックした上で遺言書を預かることにより、これらの危険を回避することができるようになりました。
また、遺言書を預けることができるのは遺言者本人に限られるため、偽物の遺言書であるという疑いを掛けられることも回避できます。
もっとも、法務局が遺言書を預かってくれるからといって、法務局がその内容まで保証してくれる訳ではありません。

(8)専門家の利用

似たような事例であっても、遺言書が形式に違反しているかどうかについて、裁判所の判断が異なる場合があります。
また、遺言書が形式を満たしている場合でも、その解釈に争いがある場合も数多くあります。
遺言書について争いがある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士からのメッセージ

相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
そして、ご相談・ご依頼の後、多くのお客様の表情は、見違えるほど明るくなります。
まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。

弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

弁護士に依頼するメリット

  • 弁護士が代わって交渉するため、相手と直接話し合う必要がなく、ストレスが軽減します
  • 弁護士の専門的知識を背景にした判断により、損失を避け、最短距離の解決を目指します
  • 税理士・司法書士との連携により、相続税の申告や相続登記までワンストップで進めることができます
 

東京西法律事務所の特長

  • 豊富な経験に基づく質の高いアドバイスを提供します
  • 十分な時間をかけた丁寧なサービスを提供します
  • 良好なご相談環境を提供します
 

相続に関するご相談はこちら

03-5335-9742受付時間:平日午前9時~午後6時

03-5335-9742受付時間:平日午前9時~午後6時

東京西法律事務所