被相続人と特別の縁故があった人は、相続人が存在しないことが確定してから3ヶ月以内に、家庭裁判所に財産分与の申立を行うことにより、特別縁故者として財産分与を受けられる場合があります(民法958条の3) 。
特別縁故者となるのは、次の①ないし③いずれかに当てはまる人です。
典型例が、内縁の妻であり、①②のいずれか(あるいは両方)に当てはまると考えられます。
①被相続人と生計を同じくしていた者
②被相続人の療養看護に努めた者
③その他被相続人と特別の縁故があった者
特別縁故者に対する財産分与の申立があったときは、裁判所は、申立人が特別縁故者となる資格があるか、また、どの程度の財産分与を行うべきかを判断し、審判を行います。
なお、裁判所が審判を行うタイミングは、実務上、相続人がいないことが確定してから3ヶ月を経過した後(すなわち、特別縁故者に対する財産分与の申立の期限が経過し、他に特別縁故者がいないことが確定した時点)に行われます。
相続財産管理人選任の申立から特別縁故者に対する財産分与を受けるまでの全体のスケジュールを図に示すと以下の通りになります。
①相続財産管理人選任の申立(申立人)
▼
②相続財産管理人選任・公告(裁判所)
▼2ヶ月経過後
③相続債権者・受遺者への請求申出の催告(相続財産管理人)
▼2ヶ月経過後
④相続人の捜索の公告(裁判所)
▼6ヶ月経過後
⑤特別縁故者に対する財産分与の申立(申立人)
▼3ヶ月経過後
⑥特別縁故者に対する財産分与の審判(裁判所)
このように、一連の手続は、複数の公告期間を挟むため、「待ち時間」が長くなることが避けられません。ただし、「待ち時間」の間に特に申立人が行うべきことは特別縁故者に対する財産分与の申立の準備以外は特にありません。
特別縁故者に対する財産分与の申立は、年間1000件程度あり、850件以上が認容されています(司法統計年報平成23年度)。
特別縁故者として適正な財産分与を受けるためには、裁判所の判断の枠組みに沿った的確な内容の申立書を作成するとともに、十分な証拠を揃える必要があります。 従って、相続財産管理人選任の申立及び特別縁故者に対する財産分与の申立を行うにあたっては、弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士からのメッセージ
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弁護士 加藤 尚憲