Q.
公正証書遺言は、どのようにして作成するのでしょうか。
A.
以下をご覧ください。
公正証書により作成する遺言を「公正証書遺言」といいます。
公正証書遺言は、公証人が証人2人の面前で作成します(民法969条)。
公証人は、全国各地の公証役場で公正証書の作成等に携わる公務員です。公証人は、多くの場合、退職した裁判官や検察官がなります。
公正証書遺言は、原則として公証役場に遺言者が赴いて作成します。公証役場は、全国各地に所在し、東京都には45か所あります。遺言者が身体的理由などにより公証役場まで来られない場合、公証人に出張してもらうことができます。 遺言書の作成準備について専門家(弁護士など)に依頼した場合は、通常、公正証書作成も専門家が付き添います。遺言書の内容は、相続人となる予定の方に知らせても知らせなくてもどちらでも結構です。
公正証書遺言の作成には、証人2人の立会が必要です。
ただし、①推定相続人、受遺者や、②推定相続人、受遺者の配偶者や直系血族は、遺言書の作成の現場に立ち会うことができませんから、証人となることができません(民法974条)。これらの人が遺言の作成に立ち会うことができないこととされている理由は、遺言に利害関係のある人が遺言の作成や内容に不当な影響を及ぼすことを避けるためです。従って、ご家族が公証役場に付き添った場合、遺言書の作成中は別室で待機していただくことになります。
証人は、遺言者が知り合いに頼んで連れてくることも可能です。証人となってくれる人に心当たりがない場合や、知り合いに遺言の内容を知られたくない場合は、公証役場に依頼すると、証人を紹介してくれる場合があります。そのような場合の証人は、元公務員ないし銀行等の金融機関を退職した方(すなわち身元のしっかりした方)が多いようです。
公証人には守秘義務(公証人法4条)があります。従って、公証人の口から遺言書の内容が第三者に漏れることはまず考えられません。
公正証書の作成当日に、遺言書の原本(公証人と署名、捺印のあるもの)、正本、謄本を1通ずつ作成します。原本は、公証役場で保管されます。正本は、遺言執行に必要となるため、遺言執行者(弁護士等の専門家に依頼した場合は通常専門家が遺言執行者になります)に預けます。謄本は、遺言者ないしご家族が保管します。三者が同じ内容の文書を保管するので、紛失や棄損のおそれがありません。
遺言書の作成は、次の順序で行います。なお、遺言書の作成にあたり、弁護士などの専門家に依頼される方も多くあります。
公正証書遺言の作成に必要な書類(戸籍謄本、登記簿謄本など)を取り寄せ、遺言書の作成を準備します。
(専門家に依頼する場合は・・・)
専門家が代わりに必要書類の取り寄せを行います。
どのような遺言にしたいかをよく考えて、遺言書の案を作成します。遺言書の内容の案を公証人に渡し、公証人が公正証書の形式にまとめます。
(専門家に依頼する場合は・・・)
遺言書の内容について、心配な点や知りたい点を専門家に相談することができます。遺言書の案の作成や、公証人との連絡は専門家が行います。
公証役場に、遺言者、公証人、証人が一堂に会して公正証書の作成を行います。
遺言者が身体的理由などにより公証役場に行く事が出来ない場合は、公証人が遺言者の居所に出張して公正証書を作成します。
(専門家に依頼する場合は・・・)
専門家も公証役場で公正証書の作成に立会います。公正証書ができたら、3通のうち1通を専門家が将来の遺言執行者として保管します。
例えば、以下のような内容となります。
以下をクリックすると別ウィンドでPDFファイルが開きます。
【公正証書遺言の記載例】(PDFファイル:80k)
公正証書遺言の作成にかかる費用は、大きく分けて、公証人に支払う公正証書作成費用と専門家の費用があります。
(a)公正証書遺言の作成費用
作成費用は公証役場の規定によって定められ、相続財産の額や相続人の人数等によって異なりますが、多くの場合5万円~10万円程度です。例えば、相続財産1億円、相続人1人であればおおよそ6万円です。
公証人に出張を依頼する場合は、別途公証人に出張手当を支払います。
公証役場に証人の紹介を依頼する場合は、遺言書の作成が終わったときに証人に謝礼を支払います。謝礼の相場は1人につき1万円程度です。
(b)専門家の費用
専門家毎に異なりますので、お問い合わせ下さい。当サイトでは、原則として一律25万円です。
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
そして、ご相談・ご依頼の後、多くのお客様の表情は、見違えるほど明るくなります。
まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。
弁護士 加藤 尚憲