子供が親の通帳を預かり、そこから生活費等を支出していることがあります。
生活費だけなら良いのですが、中には、不必要な引出しを行ったり、自分自身の支出のために流用したりする子供もいます。
このような流用の多くは、心の中で親の財産と自分の財産の区別が付いていないことに原因があります。
使い込みの行った相続人に通帳を見せるように求めても、なかなか開示してはもらえません。
このようなやりとりは時間を無駄にするだけでなく、相手の警戒心を呼び、後日の証拠収集の妨げにもなりかねません。
相続人による使い込みの疑いがある場合、当事者間で込み入った交渉は行わず、早めの段階で弁護士に相談することが解決の近道です。
子供が親の通帳を預かり、生活費など必要な費用を支出しているだけなのに、他の相続人から「使い込みをしている」などと言いがかりを付けられ、遺産分割の交渉が進まない場合があります。
そのような場合で良くあるのは、親と別居している子供が、「昔は預金が〇〇円くらいあった。親の年金が毎月〇円で、生活費が月〇円くらいだから、今は〇〇円くらいあるはずだ。現在の預金残高との差額はすべて使い込みに違いない」という「引き算論法」です。
しかしながら、このような論法は、裁判所で通用するものではありません。
よく誤解されるのですが、実は、被相続人の生前に行われた預貯金の使い込みがあったか否かに関する争いは、法的には遺産分割とは別の争いとされています。
なぜなら、遺産分割は、あくまで被相続人が亡くなった際に持っていた財産をどう分けるかの問題であり、「あったはず」の財産は対象ではないからです。
使い込みに身に覚えがないのなら、毅然とした態度で遺産分割を進めるべきです。
その上で、疑いを掛けられていることで遺産分割が進まないのであれば、弁護士に相談の上、遺産分割調停を行うこと
をお勧めします。
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
そして、ご相談・ご依頼の後、多くのお客様の表情は、見違えるほど明るくなります。
まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。
弁護士 加藤 尚憲