Q.
遺言執行者はどのような事を行うのでしょうか。
A.
以下をご覧ください。
遺言書により遺言執行者として指定された人は、相続開始後に遺言執行者となることを承諾するか否かを決定します。承諾する場合は、遅滞なく相続人に遺言書の写しと就任承諾通知を送付し、直ちに遺言執行に着手します(1007条)。
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【承諾通知の記載例】
遺言執行者の任務は、主に以下の通りです。
STEP① 相続財産の調査
相続財産の調査を行います。具体的な調査の方法については【預貯金の調査】と【不動産の調査】をご覧ください。
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STEP② 相続人の調査
戸籍謄本により、相続人が誰であるかを調査します。具体的な調査の方法については【法定相続人の確認】をご覧ください。
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STEP③ 財産目録の作成と交付
財産目録(相続財産のリスト)を作成し、法定相続人に交付します(民法1011条)。
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【財産目録の記載例】
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STEP④ 遺言事項の実現
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。遺言執行者は、遺言書に従い、相続財産を相続人や受遺者に引渡します。
なお、遺言事項を実現するため、執行行為が必要な場合と、必要でない場合があります。詳しくは、後ほどご説明します。
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STEP⑤ 任務完了報告
遺言の執行がすべて終了したときは、相続人に対して遺言の執行が完了した旨を報告するとともに、遅滞なくその結果を報告します(民法1020条・民法645条)。
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【遺言執行事務終了報告書の記載例】
遺言の内容を実現するために、執行行為の必要な事項と、そうでない事項があります。
執行行為の必要な遺言は、以下の通りです。
①推定相続人の廃除又は取消し(民法892条~894条)
②遺贈(民法964条)
③一般財団法人の設立(一般社団及び一般財団法人に関する法律152条2項、157条1項)
④信託の設定(信託法2条、3条)
⑤認知(民法781条)
⑥祭祀承継者の指定(民法897条)
⑦生命保険受取人の指定・変更(保険法44条)
上記で挙げた執行行為の必要な事項以外は、執行行為は不要です。
例えば、「相続させる」旨の遺言による遺産分割方法の指定(即ち、特定の相続財産について具体的な相続人を指定して相続させることを遺言した場合)は、執行行為を必要としません。なぜなら、遺産分割方法の指定は、遺言者の死亡と同時に効力が発生するため、執行の余地がないと考えられているからです(最高裁平成3年4月19日判決)。
もっとも、遺言執行者が指定又は選任されている場合、遺言に従った預貯金の解約ないし名義変更の手続は、通常、遺言執行者が行います。
遺言執行の費用は、相続財産から支出されます(民法1021条)。遺言執行者の報酬も遺言執行の費用の一部として、相続財産から支出されます。
遺言執行者になるためには、特段の資格は必要としません。しかし、専門家が関与して遺言書を作成する場合は、その専門家が遺言執行者となることが多くあります。また、遺言書に遺言執行者が指定されていない場合、相続の発生後に弁護士などの専門家に対して遺言執行者となることを依頼することもできます。
専門家を利用する利点は、主に次の通りです。
利点①
遺言執行は、財産目録や事務報告書の作成など、専門的知識を必要とするため、専門家に依頼した方が間違いがなく、書類作成の手間暇をかける必要もありません。
利点②
相続人ではない第三者が公正中立な立場で遺言執行者となることで、遺言の執行に関する相続人の不満や争いを未然に防ぐことが期待できます。
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
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まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。
弁護士 加藤 尚憲