10-4-6 価額弁償

10-4-6 価額弁償

Q.

先日亡くなった父の遺言書には、長兄の私だけがすべての財産を相続すると書かれていました。
そうしたところ、先日弟と妹から連名で内容証明郵便が届き、「遺留分侵害額請求権を行使する」と書かれていました。
私は父と同居していたこともあり、自宅は引き続き住み続けたいと考えています。
他方で、弟と妹は、かつて父が亡くなったら自宅を売却したいと話していた時期があり、このままでは心配です。
私が自宅に住み続ける方法はありますか。

A.

自宅について価額弁償を行い、あなたが単独の所有権を取得することができます。

(1)価額弁償とは

遺留分権利者が他の相続人に対して遺留分侵害額請求権を行使すると、遺留分権利者とその相続人との間で相続財産の共有関係が発生します。
しかし、遺留分侵害額請求を受けた人は、ある相続財産については、共有となる不利益を避け、単独で所有権を確保したい場合があります。
そのような場合、遺留分侵害額請求を受けた人は、遺留分権利者に帰属する持分の価額を遺留分権利者に支払うことにより、単独で目的物を所有することができます(民法1041条1項)。
このように、遺留分侵害額請求を受けた人が特定の相続財産について対価の支払いを行うことを「価額弁償」といいます。

(2)価額弁償を行う方法

価額弁償の効果を発生させるためには、価額弁償を行う旨の意思表示だけでは足りず、現実に価額の支払いを行う必要があります(最高裁昭和54年7月10日判決)。 もし、相手が受け取らない場合は、法務局に供託することができます。

(3)弁済の価額

株式や不動産など、価額が変動する財産については、いつの時点で価額を判定するのかが問題となります。判例によると、価額を判定するのは現実に弁済を行った時と考えられています(最高裁昭和54年7月10日判決)。

(4)具体例

【遺留分侵害額請求の(6)の具体例】の具体例で、次郎さんの遺留分侵害額請求権行使後、仮に太郎さんと次郎さんの間での交渉がまとまらなかったとします。
それでも、太郎さんは、次郎さんに対し、価額弁償を行い、自宅や山林を単独で所有することができます。

【遺留分侵害額請求の(6)の具体例】の具体例では、次郎さんの遺留分侵害額請求権の行使により次郎さんに帰属した自宅不動産の持分の価額は1875万円でした。
従って、太郎さんは、次郎さんに価額弁償として1875万円を支払えば、遺言書通りに自宅を自分単独の所有とすることができます。
なお、太郎さんは、自宅についてはそのまま住み続けたいので価額弁償を行い、山林については特に欲しくないので価額弁償を行わない(共有のままとする)といった、財産ごとに価額弁償を行うか否かの選択を行うことができます。

弁護士からのメッセージ

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弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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