9-4-4 代襲相続と特別受益

9-4-4 代襲相続と特別受益

Q.

先月父方の祖父が亡くなり、相続が発生しました。私の父は5年前に亡くなったので、私も祖父の相続人の一人です。
遺産分割の話し合いに呼ばれて出掛けていったところ、叔父から私の父は祖父から多額の援助を受けており、特別受益にあたるのではないかとの指摘を受けました。母に聞いてみると、確かに、父は生前祖父から3千万円ほど援助してもらったことがあるようですが、そのお金は父が借金の返済に回しており、今は一銭も残っていません。
このような場合も、特別受益として私の相続分は減らされてしまうのでしょうか。

A.

おそらく特別受益には該当しないものと考えられます。

(1) 代襲相続とは

本来相続人となるはずであった被相続人の子や兄弟が、相続の開始以前に死亡などの一定の事由により法定相続人とならない場合、孫や甥・姪が代わって法定相続人になります。これを「代襲相続」といいます(【代襲相続】)。この場合の、本来相続人となるはずであった人を「被代襲者」、被代襲者に代わって相続人となる孫や甥・姪を「代襲者」と呼びます。

(2)代襲相続と特別受益

民法の条文上は、相続人が被相続人から特別の利益を得た場合に特別受益になるとされています。そして、代襲相続が発生した場合、相続人となるのは代襲者であって、既に死亡している被代襲者ではありません。

すると、①代襲者自身が被相続人から特別の利益を得た場合には特別受益になるし、②かつて被代襲者が被相続人から特別の利益を得た場合は特別利益にはならない、という結論になりそうです。

しかし、上記②の場合についてよく考えてみると、冒頭の例のように被代襲者が被相続人から利益を得ているときに、相続の際に考慮されないのは不公平ではないかという見方もあります。

逆に、上記①の場合について代襲者が被相続人から特別の利益を得た場合に常に特別受益にあたるとすると、例えば、相続とは無関係に被相続人から贈与を受けた人が、後の事情で偶々相続人となったため、不利に取り扱われるというのは可哀想だという見方もできます。

このような理由から、代襲相続が発生した場合で、代襲者又は被代襲者が被相続人から特別の利益を受けているときに、それが被代襲者にとって特別受益として考慮されるべきかが問題となります。

(3)被代襲者が利益を得た場合

次の①~③の順に、それぞれの出来事があったとします。

(場面)

①被代襲者(例:子)への贈与
②被代襲者の死亡
③被相続人の死亡

(結論)

以下の通り、結論として特別受益とならないとした裁判例が複数あります。
しかし、裁判例により理由づけが異なるため、全ての場合に認められないかどうかは不明です。

・(特に例外に言及することなく)特別受益には該当しないとした例(大分家裁昭和49年5月14日審判)。
・代襲者が被代襲者を通じて被代襲者が相続人から受けた贈与によって現実に利益を受けている場合に限り特別受益に該当するとした例(徳島家裁昭和52年3月14日審判)

(4)代襲者が利益を得た場合

代襲者が利益を得た場合は、被代襲者が利益を得た場合と異なり、参考となる裁判例は見当たりません。

しかし、一般に、利益を得た時点で、①代襲者が推定相続人であった場合(すなわち、下記(a)の場合)には特別受益となり、②推定相続人でなかった場合(すなわち、下記(b)の場合)には特別受益とならない、と考えられています。(「推定相続人」とは、ある時点において、仮にその時に相続が発生したら法定相続人になるはずの人をいいます。)

(a)利益を得た時点で代襲者が推定相続人である場合:(場面)

次の①~③の順に、それぞれの出来事があったとします。
①被代襲者(例:子)の死亡
②代襲者(例:孫)への贈与
③被相続人の死亡(すなわち相続の発生)

(a)利益を得た時点で代襲者が推定相続人である場合:(結論)

特別受益に該当する。

(a)利益を得た時点で代襲者が推定相続人である場合:(解説)

孫は贈与を受けた時点で推定相続人(代襲相続により相続人となることが予定)です。

(b)利益を得た時点で代襲者が推定相続人でない場合:(場面)

次の①~③の順に、それぞれの出来事があったとします。
①代襲者(例:孫)への贈与
②被代襲者(例:子)の死亡
③被相続人の死亡(すなわち相続の発生)

(b)利益を得た時点で代襲者が推定相続人でない場合:(結論)

特別受益に該当しない。

(b)利益を得た時点で代襲者が推定相続人でない場合:(解説)

孫への贈与の時点でまだ子(孫から見て親)が生きており、孫は推定相続人ではありません。

以上のように、利益を受けた時点で推定相続人であるか否かにより結論が分かれるのは、代襲者が利益を得た時点で、将来相続が発生した際に特別受益にあたることを予測できる状況であるかどうかの違いであると考えられます。

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