Q.
遺言書の検認が終わった後は、何をすれば良いのでしょうか。
A.
遺言執行を行います。
(公正証書遺言の場合は、検認手続はありません。ただちに遺言執行を開始することができます。)
遺言に従いその内容を実現する行為を「遺言執行」といいます。例えば、遺言に基づき遺贈の登記を行うことや、預貯金の名義変更を行うことは遺言執行にあたります。
執行行為は、相続人自ら又は遺言執行者が行います。相続人が執行行為を行う場合は、(共同相続の場合は)共同相続人が全員で行う必要があります。もっとも、全員で執行行為を行うことは、時として煩雑になりがちですし、相続人が対立しているときは、協力が望めません。
そこで、遺言執行者を指定又は選任し、遺言執行者が相続人に代わって遺言執行を行わせることができます。遺言執行者が就任した場合は、遺言執行者のみが執行行為を行います。
遺言執行者は、遺言者が遺言により指定する場合と、裁判所が選任する場合があります。
①遺言による指定
遺言者は、遺言により遺言執行者を指定することができます。専門家が関与して遺言書を作成する場合、その専門家を遺言執行者に指定することが多くあります。
②家庭裁判所による選任
遺言による指定のないときは、相続開始後に、相続人は、家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任を申立てることができます。家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる場合は、誰を遺言執行者に選任するかは裁判所の判断に委ねられます。
遺言執行者の選任の申立を行うためには、以下の書面を裁判所に提出します。
①申立書
【申立書の書式】(裁判所ホームページより)
【裁判所ホームページ上の説明へのリンク】
②戸籍謄本
被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本ないし除籍謄本(遺言書の検認から5年間は不要)
被相続人の死亡の事実を確認するためです(【被相続人の死亡を証明するとき】)。
③住民票又は戸籍の附票
遺言執行者候補者の住民票の除票又は戸籍の附票
遺言執行者候補者の住所を特定するためです(【住民票と戸籍の附票】)。
④遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し(遺言書の検認から5年間は不要)
⑤利害関係を証する資料
申立人が相続人の場合は、相続人であることがわかる戸籍謄本(【被相続人との関係を証明するとき】)
遺言執行者が行うべきことについては、次の項目(【遺言執行者の任務】)で、より詳しく説明します。
遺言執行者が必要となる場合は、以下の通りです。
(a)法律上、遺言執行者によらなければ執行できない遺言事項があるとき
執行行為の必要な遺言事項のうち、以下のものについては、法律上、遺言執行者により執行行為を行うこととされているため、遺言執行者が必須となります。
①推定相続人の廃除又は取消し
②認知
③一般財団法人の設立
(b)相続財産の処分を防止する必要があるとき
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為を行う権限があります(民法2012条1項)。そして、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができません(民法1013条)。従って、相続人の1人が不法に相続財産を処分しようとしているときは、遺言執行者を選任し、不法な処分を中止するように求めることができます。
未成年者と破産者を除き(民法1009条)、法律上は誰でも遺言執行者に就任することができます。もっとも、遺言執行は専門的知識が必要なため、弁護士などの専門家がなることがよくあります。
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弁護士 加藤 尚憲