9-1-9 遺産分割調停

9-1-9 遺産分割調停

(1)遺産分割調停

相続人が裁判所で遺産分割について話し合う手続を「遺産分割調停」といいます。 調停では、裁判所の関与のもとで、当事者が合意の形成に向けて話し合います。

(2)調停での話し合い方

当事者の合意形成を助けるため、調停では、当事者が直接話し合うのではなく、調停委員が仲立ちをします。
原則として、当事者は顔を合わさず、それぞれ交互に呼び出しを受けて待合室から調停室に行き、そこで自分の言い分を調停委員に伝え、相手の言い分を調停委員から聞きます。
調停委員は、民間の一定以上の年齢の方で、主に男性1名と女性1名の2名が務めます。うち1名が法律家となる場合があります。

(3)準備書面と証拠の提出

調停は、当事者が調停委員と口頭でコミュニケーションを取ることにより進行します。
ただし、複雑な内容を調停期日にいきなり口頭で伝えようとしても難しい場合があります。従って、必要に応じて、予め準備書面を提出し、調停委員に読んでもらうことができます。
また、当事者は、期日に証拠を提出し、自分の主張を裏付けます。

(4)遺産分割調停の申立

遺産分割調停は、相続人全員に対して申立てる必要があります。遺産分割は、相続人全員の間で統一的に解決すべき事柄であり、相続人全員が手続の当事者となるべきだからです。
相続人の間で争いのない人がいる場合は、共同で申立てることができます。
遺産分割調停の申立を行うためには、以下の書面を裁判所に提出します。
①申立書
【申立書の書式】(裁判所ホームページより)
【申立書の記載例】(裁判所ホームページより)
【裁判所ホームページ上の説明 】
②戸籍謄本
(a)被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本ないし除籍謄本
(被相続人の死亡の事実を確認するためです(【被相続人の死亡を証明するとき】
(b)調停の申立人と相手方が法定相続人の全員であることがわかる戸籍謄本
(調停の当事者が法定相続人の全員であることを確認するためです(【法定相続人全員の範囲を証明するとき】
③住民票又は戸籍の附票
被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
(被相続人の住所を特定するためです(【住民票と戸籍の附票】

(5)合意形成のステップ

遺産分割調停では、すべての事項について一度に話し合うと収拾がつかなくなるおそれがあるため、基礎的な事柄から、段階的に合意を形成していきます。 話し合う事項の順は、以下の通りです。

①相続人の範囲
②相続財産の範囲
③相続財産の評価
④寄与分・特別受益
⑤具体的分割方法

これらの事項について、段階を追って1項目ずつ中間合意を形成し、最終合意を行うことを目指します。

(6)最終合意の形成

当事者が、最終合意にたどり着いた場合は、合意の内容を記した調書を作成します。
この調書は、審判書(すなわち裁判所の判断)と同一の法的効力を持ち、調停調書に基づいて不動産登記などの名義変更の手続を進めることができます。

(7)最終合意が形成できなかったとき

遺産分割調停で最終合意が形成できなかったときは、自動的に審判手続に移行します。
審判では、審判官(裁判官)が、遺産分割について自ら判断を行います。この点が、当事者間の合意の形成を目指す調停と異なります。
審判が下ると、審判の内容を記した審判書が当事者に送達されます。当事者が審判に不服を申立てなければ、審判は確定します。審判が確定すると、審判書に基づき名義変更の手続を行うことが出来ます。
審判に不服のある当事者は、即時抗告を申し立てることができます。抗告は高等裁判所で審理されます。

(8)調停に必要な期間

調停の期日は、1〜2ヶ月ごとに開かれます。期日の間に、当事者は次回の期日の準備を行います。調停の申立から調停の成立までに必要な期間は、争点の内容や当事者の争う態度により異なるため、一概に言う事はできません。

(9)専門家の利用

遺産分割調停を行う際は、弁護士に代理人となることを依頼することができます。
調停は、本人が期日に出席することを前提として制度が組み立てられており(もちろん代理人を選任した場合は、代理人も出席します。)、必ずしも本人で行うことが困難ではありません。
しかし、遺産分割調停を行う際には、弁護士を代理人とすることも多いと思われます。
専門家を代理人とする利点は、例えば、期日に調停委員に対して要領を得た主張を行うことにより、主張を理解してもらいやすくなることや、当事者としての心理的負担を和らげることができることが挙げられます。
更に、専門家に相談する事により、調停を申し立てる時点で当事者双方の有利不利な点を分析し、先を見通した主張方針を立てることが可能となります。
また、主張を裏付けるものとしてふさわしい証拠を検討し、その適切な入手方法についての助言を受ける事が出来ます。

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弁護士からのメッセージ

弁護士  加藤 尚憲

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