民法が相続人として定める人を法定相続人といいます。 遺産分割を行う場合、遺産分割の合意は、相続人全員で行うことが必要であり、一人でも相続人が欠ければ無効となります。 従って、遺産分割の有効性を確保するためには、遺産分割協議書を作成する前に、他に相続人がいる可能性がないことを確かめておく必要があります。 また、遺産分割の後に相続登記や預貯金の解約・名義変更を行いますが、その際、法定相続人全員で遺産分割の合意を行ったことを確認するため、法務局や金融機関に相続人全員分の戸籍謄本を提示する必要があります。
法定相続人の確認は、戸籍謄本を取得することにより行います。 法定相続人の調査は、戸籍謄本から「他に相続人がいることがあり得ない」と判断できる程度に行う必要があります。 具体的に確認が必要な戸籍謄本については、【法定相続人全員の範囲を証明するとき】をご覧ください。
相続人の調査の際に必ず必要となるのが、「被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本」です。 この調査は、専門家でなくても行うことは可能ですが、場合により相当の時間や手間がかかります。 それは以下の理由によります。
理由 ① 戸籍の変動
人の一生の間には、戸籍制度の変更や、結婚などにより、何度も戸籍が変わります。 従って、出生から死亡まで、平均しておよそ4~5通の戸籍謄本が必要となります。
理由 ② 市区町村ごとの保管
戸籍は、市区町村ごとに保管されています。 結婚などにより本籍地が変わっていると、複数の市区町村から取り寄せる必要があります。 また、過去の本籍地が遠方にある場合もあります。
理由 ③ 五月雨式の請求
故人の過去の本籍地が不明な場合、取得した戸籍を確認してはじめて次にどの市区町村に戸籍謄本を請求する必要があるかが分かり、複数回にわたる請求が必要となります。
理由 ④ 判読の困難さ
昔の戸籍は墨により手書きで書かれているため何と書いてあるかが判読しがたい時があります。
相続について遺産分割協議書の作成や相続登記等を専門家に依頼する場合、その一環として、法定相続人の調査を依頼することができます。
相続人が認知症であったり、行方不明であったり、未成年であったりする場合は、遺産分割手続において特別の周囲を必要とします。該当する場合は、それぞれの項目( 【相続人が認知症の場合】、【相続人が行方不明の場合】、【相続人が未成年者の場合】)をご覧ください。
(4)相続人の状態と遺産分割手続
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
また、今後どうして良いのかや、結果が分からないため、「もやもやとした気持ち」に悩まされ続けます。毎年、沢山のお客様が、このような気持ちを抱えて当事務所にお越しになります。
そして、ご相談・ご依頼の後、多くのお客様の表情は、見違えるほど明るくなります。
まだ問題が解決していなくても、直接交渉のストレスから解放され、問題が解決していく道のりを知るだけで、気持ちは大きく変わるのです。
これは、登山の途中で、山道の続く先に山頂を見付けた時の気持ちと同じです。
あなたもストレスや不安な気持ちに別れを告げるために、思い切って一歩を踏み出しましょう。ご相談をお待ちしています。
弁護士 加藤 尚憲