Q.
先月、父が亡くなりました。遺産分割はどのように行うのでしょうか。
A.
まずは遺産分割について基本的な事項を説明します。
相続は、被相続人の死亡により開始し(民法882条)、相続人は、被相続人の死亡時の「すべての権利と義務」を承継します(民法896条本文)。この権利と義務をあわせて「相続財産」といいます。相続財産に関する詳しい説明は、【相続財産とは】をご覧ください。
相続人が複数の場合、原則として、すべての相続財産は、相続人の共有になります(民法898条)(相続財産の種類により、若干の例外があります)。相続によって作り出された共有状態を「遺産共有」と呼びます。
共有の持分割合は、相続人それぞれの相続分に応じます(民法899条) 。
相続財産を共有していたままでは、相続人1人では、相続財産を利用することも、処分することも自由にできません。そこで、遺産分割を行い、相続人の間で相続財産を分配する必要があります。
遺産分割には、以下の4つの方法があります。
①合意による遺産分割(合意分割)
相続人間の合意による分割です。いわゆる遺産分割協議を経て遺産分割を行う方法です。
②遺言による遺産分割(指定分割)
遺言により遺産分割方法の指定がなされている場合の分割です。この場合、既に遺言書により遺産分割方法が指定されているので、遺産分割協議は必要ありません。
③調停による遺産分割(調停分割)
裁判所での調停による遺産分割です。
④審判による遺産分割(審判分割)
裁判所での審判による遺産分割です。
合意による遺産分割が、最も事例が多いため、この章では、合意による遺産分割のみを扱います。遺言による遺産分割については、【遺産分割方法の指定】でご説明します。また、調停や審判による遺産分割については、【遺産分割調停】でご説明します。
遺産分割は、相続人全員の合意により行います。合意の際に1人でも相続人が欠けた場合は、分割の合意は無効となりますので、注意が必要です。
【相続人が行方不明の場合】、【相続人が未成年者の場合】、【相続人が認知症の場合】は、遺産分割を行うにあたり、特別の対応が必要となりますので、それぞれの項目を参照して下さい。
相続人は、法定相続分にとらわれずに自由に遺産分割を行うことができます。例えば、被相続人の妻がすべての財産を相続することもできます。ただし、相続人の間で意見が異なることもあり、法定相続分は遺産分割を行うときの一応の目安となります。相続分については、【遺産分割の基準】で説明します。
遺産分割協議が調ったときは、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の作成方法については、【遺産分割協議書の作成】で説明します。
遺産分割協議がまとまらないときの対応については、【遺産分割協議がまとまらないとき】をご覧ください。
弁護士からのメッセージ
相続のトラブルについて自分で相手と直接交渉すると、感情がからみ、ストレスが溜まります。
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弁護士 加藤 尚憲